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FXに長年携わってきたコメンテータが、その日の相場見通しや今後のマーケットを予想する番組「外為マーケットビュー」。
本日は元ファンドマネージャーの志摩力男氏がお届けします。
📺内容まとめ
ドル売りの主要要因
為替市場でドル売りが進行している背景には、複数の要因が重なっています。きっかけとなったのは水曜日の米CPI数値が予想を下回ったことですが、それに加えてイスラエルがイランを攻撃する可能性や、アメリカが一方的に関税率を通知する方向に進んでいることが影響しています。各国は否応なくその関税を支払わざるを得ない状況となっており、世界経済全体にとってマイナス要因となっています。
ドル円のテクニカル分析
ドル円チャートを詳しく分析すると、水曜日の米CPI発表前までは比較的強気の見方が多かったものの、上昇パターンがダイアゴナルウェッジ（くさび形）を形成していました。これは多くの投資家が強気である一方で、実際の上昇は限定的であることを示し、トップ近辺によく見られる形です。
142円台からの上昇も三波構成となっており、最後がダイアゴナルウェッジであることから、これを下割れするとスムーズに下落する形となっています。エリオット波動分析では、全体として調整パターンを形成しており、最終的には下降トライアングルを下割れしていくと予想されます。
米CPI数値の背景と今後の見通し
米CPI数値が予想を下回った理由として、関税の影響が本格的に現れてもおかしくない時期にも関わらず、企業側が価格上昇に消極的であることが挙げられます。マーケットシェアを失うことへの懸念や、周囲の様子を見ながら慎重に対応していることが背景にあります。
ただし、関税の影響は夏から秋にかけて本格的に現れると予想されます。その際は米国経済にも負の影響を与え、さらなるドル売りを招く可能性があります。通常、関税をかける側の通貨は上昇するはずですが、今回はアメリカ経済が乗り越えるべき障害が多いことから、逆の動きとなる可能性があります。
債務上限問題と長期金利への懸念
アメリカは夏にかけて債務上限問題という重要な課題に直面します。共和党支配の議会により最終的には上限がクリアされると予想されますが、ムーディーズ等からの格下げを受けた後であり、30年といった超長期金利が上昇傾向にあります。
債務上限がクリアされても、アメリカ国債市場に負の影響を与える可能性があり、これがドル売りにつながる懸念があります。将来的にはアメリカでもミニトラスショックのような現象が起こる可能性が現実味を帯びてきているような気がします。
日本企業の価格戦略と市場への影響
日銀が発表した企業物価指数によると、車の北米輸出価格が5月に前年同月比18.9%急落しました。関税が25%上昇したにも関わらず、日本の自動車メーカーがそのほとんどを負担している状況です。マーケットシェアを失うことへの懸念から、企業は強気な価格設定を避けざるを得ない状況にあり、これが米CPIや米PPIに関税の影響が出ない理由の一つとなっています。
中東情勢の緊迫化とネタニヤフ首相の事情
イスラエルがイランへの軍事作戦を準備している可能性があり、中東駐留のアメリカ大使館職員や米軍基地の家族が一時避難を開始しています。この背景には、ネタニヤフ首相が汚職で訴追されており、2019年の起訴以降、2020年から公判が始まっているという事情があります。
ハマスとの戦争により裁判の延期を要請してきましたが、ガザ情勢への国際的圧力が高まる中、より大きな戦闘拡大の理由が必要となっています。ネタニヤフ首相にとって、イランの核施設攻撃などの軍事行動は政治的に必要不可欠な選択肢となっている可能性があります。
リスクオフ時の通貨動向予測
戦争状態となった場合のリスクオフ局面では、スイスフラン、ユーロ、円が買われると予想されます。ただし、原油価格が急騰した場合、当初は円にプラスでも、100ドルを超える水準まで上昇すると貿易収支悪化を通じて円にネガティブに作用する可能性があります。
現在の状況では、最もやりやすいのはスイスフランと考えられますが、ユーロスイスの価格差はそれほど大きくありません。ユーロについては、アメリカから流出する資金の受け皿としての役割が期待されており、上昇する可能性が高まっています。
ユーロドルの上昇ターゲット
ユーロドルの上昇ターゲットは、当初1.20ドル程度と予想していましたが、週足チャートを分析すると最終的には1.25ドル付近まで上昇する可能性があります。年初にはパリティである1.00ドルを割り込むと予想されていたユーロドルですが、実際には反対方向に動いており、1.25ドルが目先のターゲットとなりつつあります。
ドルスイスについては、さらなる下落余地があると考えられ、リスクオフ局面での有力な投資対象となる可能性があります。
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📅配信期間：公開日から2週間
「志摩力男 氏」
元ファンド・マネージャー 慶應義塾経済学部卒。1988年ー1995年ゴールドマン・サックス、2006－2008年ドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダーを歴任、その後香港にてマクロヘッジファンドマネージャー。独立した後も、世界各地の有力トレーダーと交流があり、現在も現役トレーダーとして活躍。
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